野鳥撮影のAPS-Cとフルサイズ(高感度比較)
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ここでは、先の記事において課題とした
フルサイズ・低画素機とAPS-C機の高感度画質について取り上げます。
メーカー告知においても一般的にも高感度画質に優れているとされるフルサイズ・低画素機ですが、野鳥撮影ではまったく事情が異なります。
それは、被写体までの距離を自由に変えられない・レンズは一定以上のスペックのものを用意できないということが前提にあるからに他なりません。野鳥撮影における高感度耐性については、撮影条件を同じ(同一の光量・レンズ・距離)にして撮影したサンプルデータを用意しなければなりませんので、バードカービングのジョビィ君に再度お願いして、画素数が同じでセンサーサイズが異なる EOS-1DX と EOS7D(後期モデル) にて下記条件で同一にしてサンプルデータを取り上げることにしました。
撮影状況
- 撮影距離 : ジョビィ君まで10m
- 使用レンズ : EF400mm F2.8L IS USM
- ピント合わせ : ライブビュー10倍拡大にてマニュアルフォーカス調整
- 絞り値 : F2.8に固定
- 照度 : 220ルクス前後。(※この撮影時の照度計は×1ルクス設定なので 227 という表示であれば そのまま 227ルクスという事になります)
カメラ設定
- ピクチャースタイル : スタンダード(シャープ3、コントラスト0、色の濃さ0、色合い0)
- 色空間 : sRGB
- 高感度時のノイズ低減 : しない
- 高輝度側階調優先 : しない
- オートライティングOP : しない
- 周辺光量補正 : しない
- 色収差補正 : する
画像出力&処理
DPP にてデフォルトのまま JPG(最高画質) にて出力後、
フォトショップCS2 にてリサイズ or 切抜き
- 照度(ルクス)の目安
- 1000ルクス : 晴天日没1時間前
600ルクス : 百貨店売り場
400ルクス : 蛍光灯照明の事務所
300ルクス : 日出・日没時
300ルクス : 30W蛍光灯2灯使用時の八畳間
200ルクス : 夜のアーケード
100ルクス : 街灯下
15ルクス : ライター@0.3m
10ルクス : ロウソク@0.2m
1ルクス : 月明かり
サンプルその@(リサイズのみ画像)
実際のフィールド状況で実験を行ったため、完全にルクスを同一にはできません (計器にもわずかな誤差が存在します) のでごく僅かな照度の違いが各サンプルにありますが、今回の撮影条件における数十ルクス程度の誤差は撮影において大きな露出変化もたらすレベルではありません。
ここまで、ちいさくリサイズすると流石に違いは殆どわかりません。照度と写っている範囲を確認して頂くための掲載です。それでは、本題の ISO3200 〜 12800 におけるピクセル等倍画像が次のサンプルです。
サンプルそのA(ピクセル等倍の画像)
EOS7D の解像力の高さとノイズの多さ、EOS-1DX の解像力の低さとノイズの少なさが際立っていると思います。カメラ側の映像出力特性の違いとも言えるのですが、EOS-1DX は確かに高ISO使用時のノイズは少ないものの、解像力はその分犠牲になっていると考えて良さそうです。
それでは、最後に更に厳密な比較として EOS7D の画像を EOS-1DX と同じ被写体の大きさになるようにリサイズした画像と EOS-1DX の ISO25600 〜 102400 まで追加したサンプルを掲載します
サンプルそのB( EOS7D リサイズ済み、ピクセル等倍の画像)
EOS7D の画像を EOS-1DX と同じ被写体の大きさになるようにリサイズした画像をみると、EOS7D の解像力の高さとノイズの多さ、EOS-1DX の解像力の低さとノイズの少なさがより一層際立っているように思います。
EOS7D-ISO3200 の画像をベースに見ると明らかに EOS-1DX の画像は軒並み細部が眠いというよりつぶれている感じがあり、シャープネスなどで調整できるレベルではないと思います。それ以上のISOになるとノイズ量の少ない EOS-1DX を使うか、ノイズが多くても解像力の高い EOS7D を使うかと言う選択を迫られることになります。
EOS7D の画像にノイズリダクションをかけてEOS-1DXに近い出力結果は得られるかもしれませんが、その逆はとても無理でしょう。そのような点を踏まえても多くの野鳥カメラマンはどちらかと言うと ISO3200以下では EOS7D の方が好ましい画像だと感じられるのではないでしょうか?
今回は高感度画像のみの比較ですので、カメラのトータル性能の結論付けではありませんが解像力を重視する傾向が強い野鳥撮影においては、フルサイズ・低画素のいわゆる高感度カメラの高感度画質には解像力の減少と言う大きなデメリットがあると言うことを踏まえて使用する必要がありそうです。
最後に、キヤノン機4機種の高感度画質のサンプルデータを載せます
撮影状況
- 撮影距離 : ジョビィ君まで10m
- 使用レンズ : EF400mm F2.8L IS USM
- ピント合わせ : ライブビュー10倍拡大にてマニュアルフォーカス調整
- 絞り値 : F2.8に固定
- 照度 : 220ルクス前後
カメラ設定
- ピクチャースタイル : スタンダード(シャープ3、コントラスト0、色の濃さ0、色合い0)
- 色空間 : sRGB
- 高感度時のノイズ低減 : しない
- 高輝度側階調優先 : しない
- オートライティングOP : しない
- 周辺光量補正 : しない
- 色収差補正 : する(7Dは未搭載のため、無し)
画像出力&処理
DPP にてデフォルト設定のまま JPG(最高画質) にて出力後、
フォトショップCS2 にてリサイズ or 切抜き
続いて、7D、X6i、5DMarkV の画像を EOS-1DX のサイズにジョビィ君を同じ大きさになるようにリサイズした画像も掲載します
ISO6400 までは EOS KissX6i が最新のAPS-C機種らしく解像力とノイズバランスがとれていて、野鳥カメラマンにとっては好ましい画質のように思います。フルサイズの EOS-1DX や EOS 5D MarkV の両フルサイズ機は ISO 12800 以上では APS-C 機より良好な画質なものの低感度でも解像力が乏しい印象が残ります。
フルサイズ機は ISO 12800 以上の高感度では優秀なので暗所撮影で威力を発揮しますが、その性能を発揮するには基本的にトリミングをせず(或いは最小限にとどめる)に写真としてまとめるのが望ましい機種と言えるでしょう。
低感度(ISO 3200 以下)で撮る状況で、トリミング必須&解像力重視であれば EOS KissX6i や EOS 7D の 両APS-C機カメラの方が良質な画像を得られるでしょう。トリミング前提なら野鳥撮影ではAPS-C機の方が有利に働く場面が多いと言われるのは、このサンプル比較からみてもそのとおりな結果になりました。
>>>> 関連記事 『 野鳥撮影のカメラ選び( EOS-1DX編 ) 』 へ移動
>>>> 関連記事 『 野鳥撮影のカメラ選び( EOS 5D MarkV編 ) 』 へ移動
>>>> 関連記事 『 野鳥撮影のカメラ選び( EOS 7D編 ) 』 へ移動
>>>> 関連記事 『 野鳥撮影のカメラ選び( EOS KissX6i編 ) 』 へ移動
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